映画『赤と白とロイヤルブルー』感想 (ちょっと辛口?) ─まさに現代の『お伽話』
公開前から話題になっていたこちらの作品。
Amazon Prime Video限定配信のため、私は未加入なのでどうしようかな〜と思っていたのですが……
スラムダンクの漫画を全巻購入した際に無料体験にも加入していたことをギリギリで思い出し、期限が切れる前日に滑り込みで観ることができました。
(気付くのが遅かったけどGood Omensも観ておけばよかった……)
作品概要
まずはネタバレなしの感想をひとこと!
タイトルにもしたとおり、まさに『現代のお伽話』だなと感じました。いろいろな意味で。
全体的にちょっと辛口な感想が多くなったので、いいところ/気になったところで項目を分けています。
雑音を入れずに気持ちよく終わりたい方は後半読まないでくださいね!
追記:この記事の感想はあくまで映画の内容についてのみです!
原作を読んだらまた違う感想になるんだろうなと思います。
※以下ネタバレあり
いいと思ったところ
『2020年代にはLGBTQを題材にしたこのような映像作品が人気を博した』
と言われるようになるのでは、と思いました。
フィクションとはいえ、実在の国家の、実在する地位の人たちの恋愛をこんなふうに描ける時代になったのか!というのは、もちろんいい意味で衝撃でした。
ただ現実にはおそらくこううまくはいかないだろうとは思います。なので、前述したように『現代のお伽話』だなあと感じました。
しかしこういう『お伽話』を描ける、ということ自体が社会の変化を示していると思うので、所詮実現しないお伽話だと言っているのではなく、ここまで夢を見られる社会になったんだな、というニュアンスです。
ちょっと話がズレますが、定期的に入れ替わるアメリカ大統領府はともかく、イギリス王室は関連する作品をどのくらいチェックしてるんだろうか……と何となく思いました。
とにかく映像が綺麗!
ここに関しては観て絶対損しないと断言できます。
それぞれのシーンのセットはもちろん、各キャラクターの服装についても(専門ではないので詳しくは分からないが)かなり練られているのを感じました。
アレックスとヘンリーの服装の違いが、立場の違いをダイレクトに示していて良い。
個人的にはビアトリス王女の服装が品があって可愛くて好きでした。
LGBTQ映画観たの実は初でした
そこそこ長くBLを嗜んではきましたが、実はBLドラマ・映画はこれまでほとんど観たことがなかった(恋愛描写がほぼないものを1作くらい)ので、いきなり16+のを観てびっくりしてしまわないかなと思いましたが、意外と大丈夫でした(※個人の感想です)。
ただ、前述した通り16+なので当然ですが結構がっつりとそういった描写はあるので、苦手かもという人は注意したほうがいいかも。
とはいえ、そういうシーンがあるのに下品にはなっていないという匙加減がすごく良いなと思いました。
描写のガイドラインとかあるのか?と思うくらいには線引きがしっかりしてたように感じます。
キャラクターについて(一部ツッコミあり)
ヘンリー
めちゃめちゃツボでした!!お顔や仕草から吹き替えの演技まで、はい、私の好きな王子様キャラですね。って感じで拍手喝采してました。
急に落ち込んで泣いちゃうところとか可愛すぎた。
うっすら触れられてるけど王子として、ひとりの子どもとしての孤独をもっと掘り下げてほしかったなあと思いました。そこを理解してこそ、アレックスから離れようとする彼の心情にぐっと重みが出ると思うんですがね。
まあ映画1本だと尺がどうやっても足りないのですが……。
アレックス
まつげなが!!顔ちっさ!!足長!!という衝撃……
そして吹き替えの演技もいい。声帯が不死身のほにゃらら感少しありました。笑 可愛い。
やっぱり彼についても、というか彼こそもうすこし掘り下げてほしかったですね。
アレックスとヘンリーはほぼそのまま自由の国と伝統の国の擬人化と言っていいキャラクターデザインだと思うけれども、アレックスの方にもう少し自由の国なりの困難や葛藤を見せてもらえたらただの楽観的な兄ちゃんよりもう一歩深い人物になったのでは…と思います。
1点挙げるなら、病院への訪問時に避難するシーン。
(もしかするともう少し長かったところカットされているのでは?)
アレックスが銃声(仮)にかなり怯えているところから、銃社会の暗い側面(=自由だからこその苦悩)についても描写できたのではと思います。
というかあのシーンではアレックスが怯えていることに対してヘンリーが驚いていますが、ヘンリーはそのずっと前からアレックスのことが好きなので(それもここで察せる)アレックスに対する認識を改めるというシーンとしてはむしろない方が自然なのではと思いました。
ここで認識を改めるのはアレックス→ヘンリーのみの方がストーリーとしてすっきりしそうです。
まあこちらも尺が足りないのですが……。
要素盛り盛りだし題材的に説明的シーンが必要なのも分かるので、なんなら映画形式よりは連続ドラマで観たかったかもと個人的には思いました。
エレン(アレックスの母)
ユマサーマン、変わらず美しくてかっこよかった。
小学校3〜4年生くらいのときに何かの映画でかっこいい…!って思ってからずっと名前を覚えている俳優さんだったのだけど、彼女の纏う凛々しくて聡明な空気はやっぱり素敵だなと思いました。
ノーラ(アレックスの友人)
可愛すぎた!
登場人物の中で一番付き合いたいの彼女ですね……
ヘルシーなチャーミングさで、アレックスとの親友としての距離感もすごく良かったです。
ビアトリス王女(ヘンリーの妹)
彼女がさりげなく赤毛なのも、彼女がヘンリーの唯一の理解者であることに納得できて良い要素だと感じました。
おそらく“普通”な長男⇔“普通”ではない弟妹という構図。
気になったところ
ミゲルの行動について
ミゲルがなぜアレックスに何も知らせずに(おそらく)情報をリークしたのかがちょっと不可解。
前々からアレックスとヨリを戻したそうなのは観客にもバリバリ伝わってきてるのを踏まえると、私がミゲルだったらこのネタをダシにしてアレックスに迫ります。笑
正直いいネタなのに何でしなかったんだろうと思ったくらいです。笑
要するにこの行動によって生まれるミゲルにとってのメリットっていうのがあまりないのが気になりますね……。
新しい恋人がいることに嫉妬して2人とも破滅してしまえと思った、というのが一番考えやすい動機ではありますが。初登場時からちょっと含みのある視線というか、あんまりいい奴じゃなさそう感はありましたが……。
いい奴じゃないなら余計、どうせならヘンリーだけが破滅するように仕向けた方がミゲル的には旨味が大きい気がするのですがね。
まあこれもたぶん脚本上今後の展開につなげるための行動にすぎないのだと思います。後述するシーンとも重なりますが、全体的にちょっと都合の良い展開が多いように思います。
ピザパ
アレックスがお母さんにカミングアウトしたあとでお母さんがいろいろとアドバイスするシーン、きっとお母さんがLGBTQについて正しく理解しているということを示すシーンなのだろうと思いますが成人するかしないかくらいの年齢の息子にあそこまで言うものなのかな…?と気になりました。(高校生くらいなら言っていても違和感はないかなと思った)
個人的な感覚だから他の人からみたらどうかはわからないし、アメリカではこういうものなのかもしれない。
結果待ち中の描写
ラストのテキサス州結果待ち中に敗北宣言を考えているシーン、負ける可能性もあるということを示唆するシーンだとは思うんだけどそんなにギリギリに考えるものなのか…?とちょっと思いました。
話ズレるけどヒラリークリントンが負けたときのあの何とも言えない空虚感と脱力感を思い出しました。
そこにいて大丈夫……⁉︎ (政治的に)
これもツッコミになってしまうんだけどほぼ最後、お母さんの勝利宣言(たぶん)のシーンにヘンリーがいるのはちょっと無理がないかな…⁉︎と思いました。
ある国の王位継承権を持つ王子が他国の特定の政党の特定の候補を支持していると見なされる行為をするのは政治的にちょっとどころかかなり問題があるのではないかなと……。
政治についてアレックスとヘンリーが語るシーンで選挙に関わることは許されないと本人の口から言われているので、いくら他国とはいえ、というかだからこそ問題なのでは……?
おそらく2人が公式に認められている、ということを示唆するシーンなのだろうとは思いますが。
前述したミゲルの行動やアレックスとお母さんのシーン、敗北宣言執筆シーンすべて共通していますが、『◯◯ということをここで示したい』っていうシーンがかなり多い上に直接的、はっきり言えば安直なのが脚本上気になりました。
こういった点から、マイナスの意味でも『お伽話』だなと感じてしまいました。
以上です!
個人的には、せっかくこういったお話を描ける世界になったのなら、細部にまでリアリティを追求して
「もしかしたらこういうこともあるかも!」
と思わせてくれるような作品になってくれたらよかったな、と感じました。
とってもハッピーな物語なのにいろいろと気になってしまった自分が悔しいです……!笑
肯定的な感想よりもツッコミの方が多くなってしまって少し申し訳ないですが……
最後まで読んでくださってありがとうございました!