開演前の空気が好き

舞台中心の感想置き場です。

新作歌舞伎 刀剣乱舞「月刀剣縁桐」とうかぶ感想 ─むしろなぜいままでなかったのか

開場2時間前に行ったら空き空きでこんなお写真も撮れました!ホクホク


刀剣乱舞歌舞伎、通称とうかぶに行ってきました!

歌舞伎自体は何度か観たことがあるのですが(直近だと5月の平成中村座姫路)、新橋演舞場には初めて行きました。

暑すぎて浴衣を着て行ったのですがお仲間も多くとっても楽しかったです!

 

公演概要

youtu.be

  刀剣に宿る付喪神が戦士の姿となった刀剣男士を率い、時間遡行軍による改変から歴史を守る人気ゲーム「刀剣乱舞ONLINE」。刀剣男士として登場する文化財は刀剣ブームを巻き起こしました。また、舞台やアニメ、映画と、さまざまなジャンルで取り上げられ、今や日本が誇る人気コンテンツのひとつとなっています。

 そしてこの度、〝刀剣乱舞〟がついに新作歌舞伎として上演されます。歌舞伎の本丸に顕現する刀剣男士は、三日月宗近、小狐丸、同田貫正国、髭切、膝丸、小烏丸の六振り。題材となっているのは、十三代将軍足利義輝が討たれた〝永禄の変〟ですが、この歴史的事件を歌舞伎ならではの発想で大胆に脚色しました。 

kabuki-toukenranbu.jp

 

もともと親和性あるだろうなとは思っていましたが、実際に観てみた結果「刀剣乱舞を歌舞伎に変換するとこうなるのか!」と素直に納得させられました。違和感まったくなし!むしろなぜ今までなかったのだろう?と思えてくるくらい。

何よりも尾上松也丈の三日月宗近、強すぎました。説得力ありすぎる……!

あとは、歌舞伎の語り方に変換されるに当たって「声」がどうなるかな?と言う懸念が少しありましたが、みなさん結構寄せてくださっていてびっくりしました。
ゲーム内台詞もいい感じに取り入れてくれてて嬉しかったです……!

 

 

※以下ネタバレあり

 

 

 

 

衣装について

・ゲームの戦闘衣装をもとにした衣装とは別に時代に(ある程度)即したキャラクターモチーフの衣装があり、2.5メディアミックスにおいて芝居パートで戦闘衣装(もしくは内番着)以外の衣装を着て登場したのは初めてだったのではないかなと思います。

個人的にはこのモチーフ衣装(仮)すごく好きでした!
そもそも各時代に潜入するにあたってゲームの戦闘衣装一本というのは無理がある……と常々思っていたので、他のメディアミックスでもこういうのあったらいいなと思いました(単純に推しが別衣装にお召し替えしたところも見たい)。


紅梅姫と三日月のシーン

・こういう発想はなかった……!!
夢女の皆様大丈夫かなって思ったと一緒に観に行った友人も言っていたけど、私も夢女の皆様の『誰よその女!?』という幻聴が聞こえました笑(ちゃんと振ってるしそれぞれの本丸システムだから大丈夫かとは思いますが…笑)

すべて男性が演じる歌舞伎だからこそ女性キャラクターをたくさん出せるという、歌舞伎だからこその強みが非常に興味深いなと。
(これの反転がすべて女性が演じるからこそ女性キャラクターをたくさん出せた刀ステ禺伝だったのかなと思う)


久直について

・久直なんて人いたっけ?と思ったらやっぱり今回のオリキャラでした。
これがこういう人物がいたら…という単なるifなのか、それとも歴史改変によって起こった変異なのかが気になる。
実際の嫡男は久通であって永禄の変を起こす張本人のひとり。
今回久通の人格が違うというifではなく名前ごと(=存在ごと)違う『久直』というキャラクターになっていることで、松永久秀が最初の時点で命を狙われているということも含め、永禄の変が起こる可能性が低くなっていた?(とはいえ永禄の変は松永だけが起こしたものではないのだけど、創作ではそのように語られがち)
冒頭、時間遡行軍が久秀ではなく義輝(菊幢丸)を襲いに来るのが気になる。そこでの働きによって三日月たちは義輝と面識を持つことになるが……
考えすぎても駄目な気がするのでこのへんにしておこうと思います。

 

・自害のシーン、いかにも歌舞伎で感動した。

冷静に考えて未来世から来たなんていうことをすぐに信じてもらえるわけがない。しかも、主君を討つという大罪人になれと言われているようなもので……そこで「覚悟の自害」によって父を説得せんという久直の行動は文脈上とても理解できた。
そしてここでひとつ重要なのが、この前のシーンで久直は三日月に命を救われているという点。これがあるからこそ、久直は一度助けられた命をここで返すという引き分けの状態に脚本上することができ、説得感が増しているように思う。

ちなみに三日月が自害して説得しろと言ったわけではないし、『三日月宗近』はそういうことしないと思うけども、結果的に久直が斬られる直前に三日月が仲裁に入ったことによってことが「上手く」運んだというわけで……全て意図的だったらちょっとこわいな……とは思った。
でも三日月宗近は後述の「民草のうらみ」が増すような(久直は武家ではあるけど巻き込まれなので民草カウントされるのではと思う)ことはしないと思うし…という複雑な感情。

 

異界の翁・嫗について

・「民草のうらみが形をなしたもの」という説明、もしかしてとうらぶ史上初めて名言されたのでは…?

花影の感想記事(1部)でも少し書いた話題ですが、もし時間遡行軍がとうかぶで言及された通り「民草のうらみ」によるものなら花影のストーリーとしても意味が通ることになる(歴史への攻撃が何らかの統一された目的・思想によるものではなく、各々がそれぞれの『if』を実現させている状態)。
しかし『軍』という名称を使っている以上組織ではあるはずだし、その裏に目的が……とかあってもおかしくはないと思うんですけどね。
ちょっとわかりません。

・話は戻ってとうかぶの翁と嫗について。
姿が戻った後の衣装が蜘蛛の巣モチーフで、なるほど土蜘蛛モチーフなのかと納得。後のシーンで三日月が「まつろわぬ者」とも言っていたし、能(平家物語)の土蜘蛛といえば膝丸(蜘蛛切)であるし、単なる蜘蛛ではなく土蜘蛛設定なのは確定かなと。能の土蜘蛛で有名な和紙で作られた蜘蛛の糸をぴゃっと投げるシーンもあり、これぞ伝統芸能とのコラボレーション…!とテンション上がりました!
(よく見たら翁さんの僧侶装束ですでに蜘蛛の巣の模様ついてました。笑)

 

永禄の変

・このシーンのセットがものすごくツボでこれこれ!!ってなった……!
畳に刀を刺して…というのはどこかで聞いたことがあって知ってたのですが(もしかして刀ステの悲伝で出てきてたかも?記憶が曖昧……)
岩!滝!っていうロケーションがまったく現実的ではないものの、その記号化された表現に歌舞伎を感じました。

・義輝vs三好松永兵のシーン、アクロバット(とんぼというらしい)がすごかった……!
あんな段差のある、踏み外したら即落下しそうなところで。見てる方が怖かったです。笑
ここも歌舞伎の見せ場!という感じで本当に親和性高いなあと思いました。

・義輝が翁と嫗を斬ったあと隈取がなくなるシーン、これこそ歌舞伎の表現だ〜!!って感じですごくよかった(どうやってるんだろう……?)
正気を取り戻してからの義輝と三日月の対峙シーン本当に良かった……
たっぷりの時間と間を使って、元の主を討つことへの三日月の葛藤や、義輝のこれがさだめと受け入れながらも捨てきれていない生への執着が伺える立ち回りをじっくり堪能できた。
歌舞伎というか伝統芸能ならではのゆったりとした時間の使い方が、テンポの良い展開に慣れきっていた身にはとても新鮮でした。

 

松永弾正について

・「後の世の人々に謗られようとも…」(台詞うろ覚え)の松永弾正かっこよすぎて痺れました。
こんなに久秀が悪者扱いされない作品は難しいのでは?
そもそも三大悪は後世の創作であるとされているけど、そのようになった理由が今回の世界線では「刀剣男士」だとしたら…?っていうifも含まれているのかなとも。

 

「さだめ」

全体的に登場人物のみなさんの「さだめ」に対する順応性が非常に高くて歌舞伎(というか武士の世の価値観)を感じた。
これまでのメディアミックスでは、これがさだめと言われても、分かっていても抗うのが人として、生き物としての性、というような世界観のストーリーが多かったように思うけど(映画継承が最たる例かも)、今回はさだめをさだめとして受け入れるという価値観のもとで一貫していて逆に新しさを感じました。
(映画継承は信長という人物のキャラクターもあるからな……とも思うけども)

 

セット

とにかく種類も多いし作り込みもすごくて、凄かった!(語彙力)
場面転換中は幕が下がっていろいろがたがた動かしてる音が聞こえて人力を感じ、いいな……と思いました。
普段見る現代演劇はすぐに次のシーンに進めるようなセットという縛りで作られている気がするけど、今回はそのスピード感よりも見せたい画を作りたいという熱意を感じた。

 

各男士の感想

⚫︎三日月宗近
・声が一番よく通っていて聞き取りやすく綺麗で説得力のありすぎる三日月宗近
・これまでの三日月って底知れなさみたいなものが強かったような印象だけど、個人的には今回の三日月かなりおっとりしていたように感じられた!

⚫︎小狐丸
・野性味強めな小狐丸さん新鮮!!
・白頭(と言っていいのか)が違和感ゼロなもふもふ。
・台詞細かく覚えてないんだけど三日月の様子を見に来るみたいな世話を焼くみたいなシーンがあってこれも新鮮でした!!
・(義輝さんも凄く良かったけど)正直もうちょっと見たかったです…!!笑

⚫︎小烏丸
・圧倒的美……!!
・個人的に今回出てた男士の中で一番演じ方好きだったかも……
・源氏に対して「二人でやっと一人前のくせに…」とか、たぬにも無鉄砲みたいなことを(うろ覚え)言ってたシーンがあったんだけど新鮮だった…!こういう感じで若者扱いするシーンって初めて見たかもしれない。
ここに関しては父っていうより姐さん感があった気が笑

⚫︎髭切
・かわいい〜!!
・「弟の…なんだったかな〜」のところがめちゃぽやぽやしててあまりに髭切でかわいかった……!
・紅梅姫も可愛すぎた〜 最初兼役なの気付かなかったほど。
・髭切ももうちょっと見たかったです!!

⚫︎膝丸
・かわいい〜!!(再)
・「泣いてはない…泣いてはないぞ!!」のところもう泣いちゃっててかわいいし小烏丸様とたぬに慰められてるのさらにかわいすぎた。
ついったで「ぺそぺそに泣いてる」と評判だけどぺそぺそって表現かわいくていいなと思いました。

⚫︎同田貫正国
・若さ!!!って感じすごくよかった!!
・声の寄せ方が絶妙で素敵でした!ゲーム内台詞がもともと時代がかってないから口調とか変わってるかなと思ったんだけどそのまま言ってて驚いたり。
・たぬももうちょっと見たかったですね!!

 

 

以上です!

今回かなり早めに行ったので、歌舞伎座の地下を見に行ったり喫茶店でお茶したりと、銀座や演舞場の空間と雰囲気楽しめてとっても充実した1日でした。

もしもうちょっと私に財力があったら複数回観たかったです……!

シネマ歌舞伎化も決定したとのことで、また観られるのがとても楽しみ!
そして別の題材でも観たいのでこれを機にどんどん続いていってくれたら嬉しいなと思っています……!

 

撮影可能タイムで両手を振ってくれるとうかぶ本丸の三日月宗近

 

最後まで読んでくださって本当にありがとうございました!