開演前の空気が好き

舞台中心の感想置き場です。

スタジオジブリ「君たちはどう生きるか」考察未満感想 ─これは映画ではない、「宮崎駿」だ

英題を投稿直前に初めて知ったんですが「少年と鷺」なんですね(The Boy and the Heron)

 

君たちはどう生きるか」公開してすぐ観に行ってました!

本当は公開翌日の土曜日に予約をとっていたんですが暑すぎて外に出るのを断念し、平日仕事後にレイトショーで観ました。笑

 

作品概要

www.ghibli.jp


観終えた後、私は映画を観に来たのではなく、宮崎駿を観に来たんだ……と思いました。笑

 

まずはネタバレなしの感想を少し。

 

なんというか、怖かった、畏怖。
80代でこれが作れる頭の中どうなってんだろう!?
面白いか面白くないかという尺度で測れないくらい、創造性が凄すぎて畏怖。

これが最後なのかもしれない……と、すべてのシーンからひしひしと感じてしまった。
日本のアニメーションの一時代いや頂点を築き上げて巨匠と呼ばれ最後に作るのがこの作品なんて最高では?
これを作るために生まれてきたのではないのだろうけど、これを作らずには死ねなかったのではなかろうか。

宮崎駿はこれを遺作にするつもりだったのかもしれないなと観ながら思ったけど、そのあとで次回作も構想中みたいなニュースを見てまじかよ……と思ったのはここだけの話。笑

jp.reuters.com

天才の頭の中を推し量ろうとした自分が甘かったです。笑

 

あと、よく言われてるけど気持ち悪いか気持ち悪くないかで言えば気持ち悪いです。笑
そもそもジブリはちょっと気持ち悪いの多いけど、ダントツで気持ち悪い。
ハウルの動く城、のちょっと気持ち悪いシーンとかの方向性の気持ち悪さなので、苦手な人は覚悟して行った方がいいかも。

 

※以下ネタバレあり

 

 

 

 

過去作の要素

過去の監督作品のオマージュ(…とは言えないのか、自分のものだから)、過去作を思わせる場面が非常に、非っっっっ常に多い。
まだ1回しか観てないので漏れていると思うけど個人的に気付いたところだけでも

ハウルの動く城:星の落ちる場所、母が溶けていくところなどあらゆるところ

風立ちぬ:船の葬列、空襲に逃げ惑う人の海など

崖の上のポニョ:海や獲物の描写など

風の谷のナウシカ:最初にアオサギに誘われるところでの眞人に群がるカエル(≒ナウシカクシャナ軍に蟲を嗾けられるシーン)など

天空の城ラピュタ:キリコがドーラと似ていることなど

となりのトトロ:ワラワラなど

紅の豚:(具体的にどこか忘れてしまったが似ているなと思った瞬間があった)

などなど。もちろん網羅はできていないと思います。

これに関しては元ネタの過去作を知っていないと分からないので、これまでの人生でジブリ作品をどれだけ観ていたかで面白いと感じられる程度が変わってくるといっても過言ではないように思った。

ちなみにこれを機に私が今まで観てきた作品を確認していたら高畑監督の映画をあまり観ていなかったことに気づいたので、これから観たいなと思います。
他の方の感想をチラ見していてかぐや姫の物語との相関を指摘している方がいたので気になる。

 

アオサギ

アオサギの口調が明らかに不安定だったのが非常に気になった。
ナツコ様と言ったりナツコと呼び捨てにしたり、外部の何らかの存在に意識を乗っ取られたり自我を取り戻したりして揺らいでいるのか……

 

キリコとじいや

キリコと眞人が賄賂を渡すじいやには「たばこ」を吸うという共通点がある。

また、眞人が最初に家に来るシーンでも、廊下の横でその列を見ているじいやにキリコ婆が手を振っていたりと、2人だけ他のじいやばあやたちとはちょっと異質な動き方をしている。

眞人を塔の中で助けるキリコと、眞人がアオサギに対抗する手段としての武器を手に入れる助けになるじいや。
そこまでの対称性はないがすこしだけ際立たせられているのかもしれない。

 

産屋のシーン

思わず泣いてしまった。

あなたなんか大っ嫌いと言ったナツコさんも、ナツコをお母さんと呼んだ眞人も…どっちも本音で、それをぶつけ合えたからこそ、その後仲良くなれたのだろうと思う。

ナツコに大嫌いと言われても、そして正直そんなに好きにはなれていなかっただろうに、それでも眞人がナツコに手を伸ばしたのは「お母さん」をまたも失うことに耐えられなかったのだろうなと考えるといじらしい……そして切ない。

 

宮崎駿がお母さんに言ってほしかったことを言ってもらい、たくさん抱きしめてもらう。
多くの作品でちらちらと見えていた「母」というものへの想いが、最もストレートに表出されている作品。
すべての終着点はここでしょうね。
(タイトルの『「宮崎駿」だ』は8割この点を指しています)

ヒミの「いい子だね」「君のお母さんになれる」「火なんて怖くない」このあたりからひしひしと感じられた。
意訳するなら『あなたのためなら死んでもいい』。
つまり最大級の愛してるがほしかったのだと思う。

ヒミが未来を知っていることにちょっとびっくりしたけど、この塔がどの時空にも繋がっているのだとしたらそこを覗いて知っている可能性も高いのかな?(戻ったあとの世界でそれを覚えているかは別にして)

それを知った瞬間の眞人の台詞が(尺やテンポの問題も大きいと思うが)、「なんで知っているの!?」とか「知ってたの!?」ではなく「だめだ!病院の火事で死んじゃう!」だったのがもうほんとにしんど…って
このシーン結構ガチ泣きしてしまった。
なによりもいなくなってほしくないんだよなと。

 

塔について

現実の時空から切り離されており、ヒサコさん(ヒミ)が神隠し(仮)に遭っていた一年と、眞人が迷い込んだ今回は同じ時空を共有していると考えられる。
そしてヒサコさんが現世に戻ってこれた(戻ってきてしまった)のも、眞人がきっかけと解釈できる。

キリコにも同じことが言えるが、キリコも一緒に居なくなったという話は婆やたちの話には出てこなかったので同じ地点から来たけどお屋敷に奉公する前だったのか?
塔の中でキリコはヒサコを「ヒミ様」として認識しているようなので、少なくとも元々面識があるという感じではない。
すでに大人のようだったけど、出戻り→奉公とかだったのだろうか。
眞人のケースから帰還地点は扉に依存しているようなのでこれきっかけで奉公することになったのかも、とも考えられるなと思った。

どちらにせよお屋敷の不思議の話をしていたときにキリコの話を出してしまうとその後のネタバレ?になるから言えないか。(メタ視点だが)
(とはいえ旦那さまに奥さまの話をしてるんだからわざわざ使用人の話はしないか……)

 

最後、眞人とナツコとアオサギは同じ扉、ヒミとキリコは違う扉から旅立つ(=異なる時代に帰っていく)が、眞人が帰還してから眞人のポケットからキリコ(おばばのすがた)が出てくるという仕掛けが凄かった。(たしかその像はキリコ自身が持たせたような気がしていたのだけどどうだったかな)

 

「悪意の象徴」

眞人が自分で頭を傷つけたことも、ナツコが明らかに森の方向へ歩いていっているのに声をかけず周りに報告もせず放っておいたのも、どちらも眞人の「悪意」がもとになっていて、そしてそれが今回の事態の引き金になっている。

大叔父が「悪意」によって世界を構築したことと、眞人があの世界に入り込むきっかけがすべて「悪意」によるものだということが共通している。

眞人はそれを自覚しているから、『悪意なしに世界を構築できる』と大叔父は判断したのかな。

 

矛盾する大人の象徴としての父

刀を差し、水筒をたすきにかけ、懐に板チョコを忍ばせて塔に向かう男。

サイパンが陥落して文句を言い、その舌の根も乾かぬうちにこれからもっと儲かるぞと悪びれもせず言う男。

異国の地で戦死する兵士たちについてはまったく気にも留めないのに息子が喧嘩して傷を負って帰ってきたら「大事な息子が傷つけられて黙っていられるか」「かならず仇を討ってやる」と張り切って言い出す男……

大叔父や眞人と違って、少なくとも「悪意」はない人物として描かれているのが興味深い。
悪意はなくても、悪いことってできてしまう。それが人間なのかも。

 

 

 

以上です。

1回しか観てないうちに時間が経ってしまった!
まだまだ劇場で上映されているみたいなので、あと1回は少なくとも観てきたいと思います。

やっぱり大きなスクリーンでいい音響で観るスタジオジブリ作品は迫力が違いますね。
過去の作品をリバイバル上映とかしてくれないものかしら、と思ったら2020年にやってたんですね。全然知らなかった……
そういえばもっと昔ですが2016年にスタジオジブリ総選挙企画で再上映された千と千尋の神隠しは、チケット争奪戦に勝利して六本木まで行って観たことがあります。最高だった……

当時私はラピュタに投票したんですがやっぱり千と千尋は強かったですね〜
今考えてもやっぱりラピュタか、あとはナウシカ紅の豚を観たいです。


ラスト全然違う話になりましたが笑

最後まで読んでくださってありがとうございました!